結論:AIエンジニアの私でも、法人決算は自力で完結できなかった
先に正直に書きます。
私はkintone開発を生業とするITエンジニアです。AIは日常的に使い、行政手続きも自分で調べて対処できると思っていました。法人の設立登記も、税務署への届出も、すべて自分でやりました。
なのに、決算だけは自力で完結できませんでした。
「自分でできる」という自信があったぶん、詰まったときのダメージは大きかったです。同じように「どうせ自分でできる」と思っている人に、先に現実を伝えておきたくてこの記事を書いています。
結論から言うと、日常の記帳は自分でやり、決算・申告は税理士に依頼するのが最もコスパが高い選択でした。そしてこの役割分担を実現するのが、マネーフォワード クラウド会計の税理士招待機能です。
詰まった壁①:試算表の数字が、どこかで必ずズレる
記帳自体は、AIに「この支払いは何費ですか」と聞けば勘定科目はだいたい分かります。
問題は期末の締め処理でした。
年度末が近づくと、試算表(月次の収支まとめ)の数字がどうしても合わない場面が出てきます。
詰まったのはこの2つ
- 未払費用・前払費用の計上:年度をまたぐ費用をいつ・いくら計上するかのルールが会計独特で、AIに聞いても「場合による」という回答しか返ってこない
- 試算表の貸借不一致:仕訳の入力ミスが積み重なって残高が合わなくなる。どの仕訳が原因かを探すのが、コードのデバッグよりはるかに難しい
コードのデバッグは「エラーが出た行に問題がある」という手がかりがあります。
会計のズレには、そういうスタックトレースがありません。どこかの仕訳が1円ズレていても、そのまま通ってしまうのが会計ソフトの仕様です。
AIは「考え方」を教えてくれますが、「あなたの帳簿のどこが間違っているか」は教えてくれません。
詰まった壁②:e-TaxもeLTAXも、全体像がまったくつかめない
決算書ができたとして、次に待っているのが電子申告です。
法人の申告は大きく2系統あります。
| システム | 対象 | 申告する税金 |
|---|---|---|
| e-Tax | 国税庁 | 法人税・消費税 |
| eLTAX | 地方税ポータル | 法人住民税・法人事業税 |
この2つを別々のシステムで申告しなければならないこと自体、最初は知りませんでした。
「全体像がつかめない」の正体
ネットで調べると「e-Taxソフト」「e-Taxソフト(WEB版)」「PCdesk」「elTAXの利用者識別番号」と、似て非なるツール名が大量に出てきます。
どれをどの順番でセットアップすれば動くのか、公式ドキュメントを読んでも体系的に書かれていません。
私は IT の設計ドキュメントを日常的に読んでいますが、e-Tax / eLTAX のドキュメントはその比ではないほど分かりにくかったです。「とにかく動かしてみる」という進め方ができないシステムでした。
法人税申告書の「別表」も問題です。別表一、別表二、別表四……と続く書類群は、会計と税務の両方の知識がないと正しく埋めることができません。
AIに「別表四の書き方を教えて」と聞くと、一応説明してくれます。でも「あなたの会社の場合、ここはいくらになりますか」という応用には答えられません。
「自分でできる」と思っていた根拠が崩れた
設立登記・税務届出・銀行口座開設・社会保険の手続き——これらは自分でできました。
いずれも「手順通りに書類を埋めて提出する」という性質の作業だからです。
決算が違うのは、「判断」が必要な場面が随所にあるからです。
- この支出は資産計上か費用計上か
- 消費税の課税区分はどれか
- 減価償却の方法をどう選ぶか
- 申告書の数字をどう連動させるか
これらは「正解を調べる」ではなく「会計ルールの体系を理解した上で判断する」必要があります。
私がエンジニアとして感じたのは、決算は「実行」ではなく「設計」の仕事だということです。設計には専門的な訓練が要ります。
最終的な結論:役割を分けたら、すべてうまくいった
私がたどり着いた答えは「全部自分でやる」でも「全部丸投げする」でもありませんでした。
| 作業 | 担当 | 使うもの |
|---|---|---|
| 日常の仕訳入力 | 自分 | マネーフォワード(銀行・カード自動取込) |
| 決算書の確認・修正 | 税理士 | マネーフォワード(税理士招待機能) |
| e-Tax / eLTAX 申告 | 税理士 | 税理士の申告ソフト |
マネーフォワードの「税理士招待機能」がこの分担の鍵です。
私が日常入力したデータを税理士がリアルタイムで確認でき、決算期に「ファイルを渡してやりとりする」手間が一切ありません。税理士側も「このソフトが使いやすい」と言っていました。
顧問料は発生しますが、申告ミスで払うペナルティや、詰まって費やす時間のコストと比べると、明らかに安い選択でした。
💡 次に読むべきおすすめ記事
- ひとり法人の初年度PLを全公開。年商880万・営業利益386万 — この決算で出た実際の数字
- 法人の会計ソフトは無料で済むか。ひとり法人が試した結論 — 無料ソフトでどこまで対応できるか
- ひとり法人の会計ソフト比較。freee・マネフォ・弥生の最適解 — 各ソフトの詳細比較
- 事前確定届出給与で300万円を損金不算入にした失敗談 — 決算前の別の落とし穴